俺たちの曳き回し練習8

『目が覚めたか?』

盆休み直後の練習を振り返り、長采はそう言った。

囃子、根曳ともに心に火が入る後半戦の再スタート。

昨日のミーティングの気づき
『点対象のポジションで動きを合わせる』
『初動のタイミングを合わせる』
各ポジション毎に再確認して練習開始だ!!

集合前に突然のにわか雨。
『今日休みになるかも。。』
なんてことを考える奴は一人もいない!!
『踊り場の濡れるやっか!!クソッ!!』
そんな気持ちだ。

踊り場では賑町の皆さんが手ぬぐいを持って、俺たちが練習しやすい環境を整えてくれていた。
田中自治会長をはじめ、竜宮連(後方サポートをして頂く方々)も自らスポンジを持って、踊り場の湿り気を取ってくれている。

くんちは奉納をする町だけが主人公ではない。
このように陰で支えてくれている他町の皆さんもまたくんちの一員なのである。

感謝!!

1セット目
右舷後ろ、左舷後ろ計3名抜けているためか、なかなかセンターに合わせられない以外はなかなかの滑り出し!!
タイミングも合い『良い回し』の糸口をつかめた回になった。

2セット目、体力が落ち少々スピードが落ちる。
以前課題の逆回し〜正回しのタイミングはなかなか一筋縄ではいかない。

大体のパターンとして逆正を境目にスピード体力が落ち、演技の精度が極端に落ちる傾向。

休憩中、ついついグッタリしてしまう。
『慣れ』は人間の最大の伝染病だ。
長采の集合に反応が遅い根曳衆に頭のコージさんが吼えた。

『いいかげんにしろ!!』
『ダラダラするな!!』
『やればできるんだから!!』

頭の激にピリッと緊張感が甦った。

3セット目
満身創痍の体を無理やり動かす根曳衆。

長采も副根曳も今まで以上に必死だ。
振り切るのは『采』ではなく『限界』
そう言わんばかりに、逃げからドロロンで上がる俺たちに激しく呼びかける長采。
『こっちぞ、来い!!!!!』
『真ん中ぞ!!!!!』

『オイイ!!!!』
ここからは根性一発、お互いの気持ちをひとつにするしかない!!
体が言うことを聞かない時こそ、【タイミング】【瞬発力】が必要だ。

それが合わなければ、あのキツイ『奴隷回し』のみが待っているからだ!!

『最後まで走れ!!』
『すぐ切るぞ!!』
根曳の間でも激しい掛け声が飛ぶ!!

最後に振り絞る根性は互いに引きださなければならない!!

今までで一番回す回数が多かった今回の練習は過去最高のキツさだったが、当初の課題である
『点対象のポジションで動きを合わせる』
『初動のタイミングを合わせる』
に関しては、糸口をつかむことができたのは大きな収穫だ。

そして、今回は初めての新演出『囃子外打ち』も加わり、ボルテージが上がった練習だった。

船に乗った囃子の主旋律に対して輪唱のように奏でるバックビート。
遠くから雷鳴のように轟くヘヴィーサウンド!!

まだまだ未完成だが、これはくんち史上に伝説を残すかも知れない。
それほどのインパクトを感じました!!
囃子のみんなも頑張れ!!

『鳴らせーーーー!!』
『回せーーーーー!!』
『俺たちの竜宮船!!』